第647号【11月の夏日を乗り越えて】

 11月のはじめの3連休は、各地で連日の夏日となりましたね。長崎も9月初旬のような蒸し暑さで、道行く観光客は半袖シャツ姿が目立ちました。街路樹のナンキンハゼの紅葉は見られるものの季節の深まりを感じさせるような風景は、まちのなかには少なく、住宅街をぬけ、段々畑が残る鳴滝の山あいまで足を運びました。そこで、ようやくススキやセイタカアワダチソウが群生する秋らしい風景が見られました。この異例の暑さも連休明けの雨でひと区切り。気温は下がって秋らしさがもどってきたようです。


 




 市街地散策の道すがら秋の味覚、「グベ」が実っている様子を目にしました。長崎では、「ムベ」のことを「グベ」と呼びます。子どもの頃、学校帰りに道脇でもぎって食べたことがあるなど、ひとによっては懐かしい思い出と重なる食べ物でもあります。種が多く、食べられる部分は少しですが、とろみのある果肉は甘くておいしい。アケビによく似ていますが、アケビのように熟すと実が裂けるということはありません。また、葉にもわかりやすい違いがあり、「ムベ」は常緑性でツヤのあるしっかりとした葉ですが、アケビは落葉性でやわらかな葉です。





 

 11月の秋晴れの下、長崎港と市街地の景色を撮るために鍋冠山(なべかんむりやま)へも足を運びました。鍋冠山は長崎港を囲む山のひとつで、南山手にあるグラバー園の背後に位置しています。標高約169mの低山で、グラバー園の第2ゲート付近から、整備されたコンクリートの階段の歩道を利用すれば、頂上まで15分もかかりません。頂上には回廊形式の展望台があり、港や市街地はもとより、まちを囲む山々の姿やその向こうの眺望までぐるりと楽しめます。この日は、長崎港内に大きな帆船の姿もありました。11月最初の土日に4年ぶりに開催された『長崎帆船まつり』に参加するために入港した「海王丸」(全長約110m)でした。





 

 鍋冠山からの下山途中、樹木のてっぺんでさえずる鳥を見つけました。人の手が届かないたいへん見晴らしがよさそうな場所です。カメラのズームを通して見ると、モズでした。モズは里山に近い林などに棲息。秋になると見通しのよい高い所で、高鳴きをして縄張りを主張します。このモズも、まさに高鳴きの最中だったようで、喉元を大きく膨らませたり、凹ませたりしながら鳴いていました。





 

 今年は夏の猛暑や11月初旬の夏日など、いつもとは違う気象が相次ぎましたが、秋に大陸から日本に渡ってくるジョウビタキは、例年と変わらない時期(10月中旬)に見かけたので、ホッとしました。長崎の市街地では、この秋も若いアオサギ、シロサギ、イソシギの姿が見られ、次の世代が育っている様子です。これからも、まちなかで生きる野鳥をとりまく環境が、よりよい方へ向かうことを願うばかりです。





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