第664号【令和七年ながさきの春色】

 長崎の桜の開花は324日でした。その後、厳しい寒の戻りがあったことで、花がずいぶん長持ちしました。開花から2週間以上経ったいまは、花びらが舞い散る様子を楽しんでいるところです。それにしても近頃は、気温の変化が極端です。桜の季節が終わったらじきに夏めいて来るかもしれないので、いまのうちに春らしさを満喫しておこうと思います。



 

 新年度がはじまり、この春から通勤や通学にJRの駅を利用するようになった方が大勢いらっしゃることでしょう。長崎駅界隈でも、やや緊張気味のフレッシュな顔ぶれが行き交っています。彼らは、これからいろいろな出会いや別れを経験するなかで、この駅舎が大切な思い出のひとつになっていくのだと、あらためて思うのでした。



 

 新長崎駅舎が開業したのは5年前の春でした。その後、駅周辺にはホテルや新しい駅ビルが次々に建ち、整備がすすめられてきました。かつて旧駅舎前にあった高架橋広場はすでに撤去され、広いスペースが生まれていますが、この辺りはまだ工事が続いています。公表されている計画によると、多目的広場が設けられる予定です。樹木が植えられ緑を楽しめるエリアになるよう。いまからとても楽しみです。



 

 寒の戻りが解けたあと、街へ散策に出ると小学校の校庭の桜が満開。花の向こうから子供達の楽しそうな声が聞こえてきました。また、中島川沿いの小さな公園では、桜が風にあおられ子供らが宙を舞う花びらをつかもうと、手のひらを広げて走り回っていました。その日の風は思いのほか強く、川沿いの柳の枝もしならせるほど。その枝に生えた若葉がとてもきれいでした。日本の「色」の世界では、やや白みをふくんだやわらかな印象の黄緑色を「柳色(やなぎいろ)」といいます。それは文字通り、柳の若葉の色。「桜色」とともに日本の春を代表する色だそうです。



 

 長崎市役所の19階にある展望フロアにある「屋上庭園」でも素敵な春色との出会いがありました。スミレです。たぶん、庭園の芝生の土にスミレの種がまぎれていたと思われます。このスミレはいわゆるスミレ色(紫)のスミレでしたが、実は、この春、白いスミレとの出会いもありました。ブロック塀と道路との間に咲いていたのですが、真っ白というより、温かみのある乳白色の花びらです。図鑑で調べると、どうやら「アリアケスミレ」という種類に近いよう。ちなみに日本のスミレの種類は約60種類。それらを見分けるのはかなり難しいそうです。



 

 春めく季節はやはり鮮やかな緑色に目が止まります。春野菜が並ぶ店頭で、ひときわ目をひいたのがアスパラガスです。長崎県のアスパラガスは、全国で4位の生産量。江戸時代にオランダ船が運んできたと伝えられる野菜のひとつです。この時期に出回るものは「春アスパラガス」と呼ばれ、色あい、香り、甘みがしっかりしているのが特長です。アスパラガスには、アミノ酸のひとつで疲労回復に効果があるとされるアスパラギン酸が豊富に含まれています。春の疲れに、アスパラガスをどうぞ。

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