第669号【長崎9月の花と月】
サルスベリが気温30℃を超える猛暑のなか、元気に花を咲かせています。9月も中旬に入りましたが、この先1週間は、30℃以上の厳しい暑さが続くという予報です。それでも、季節は確実にすすんでいて、夜には秋の虫の鳴き声が聞こえ、風もひんやりとしたものが混じるようになりました。空を見上げれば、夏雲と秋雲が拮抗。ささやかでも、秋の気配を感じると安堵しますね。
中島川で、この暑さのなか、大いに繁殖している花がありました。キキョウに似た青紫色の花で「ヤナギバルイラソウ(柳葉ルイラ草)」という植物です。メキシコ原産の帰化植物で、名は、細長い葉の形が柳の葉に似ていることに由来。「ルイラ」は学名の「Ruellia(ルイラ属)」からきているそうです。可憐な見た目ですが、地域によっては駆除の対象になるほど繁殖力が強い植物。気付けば、側溝やアスファルトの割れ目、ブロック塀の根元などそこかしこで花を咲かせていました。
さて、屋外の厳しい環境のなかでたくましく花を咲かせる植物がいる一方で、人間に大切に育てられて魅力的な花を咲かせるものもいます。長崎県庁のロビーで地元の花農家の方々が栽培した菊が展示されていました。菊といえば、仏花のイメージが強いのですが、そこにあった菊は、どれも個性的な魅力を放ち、お祝いの花束や華やかな催しの花活けにも合うような美しさでした。ちなみに長崎県の菊は、全国5位の産出量。若手の花農家の方々が、がんばっているそうです。
菊(栽培種)は、奈良時代に大陸から渡ってきた植物です。優れた薬効があり不老長寿のシンボルとされていました。同じく中国に起源を持つ9月9日の「重陽(ちょうよう)の節句」は、「菊の節句」とも呼ばれ、不老長寿を願って菊の花を浮かべた「菊酒」を飲む風習があります。また、江戸時代に菊の栽培が流行った時期には、新しい品種を作り、その姿形を競い合ったそう。菊のシーズンである秋は、鉢植えや形造りの菊を並べた「菊見の会」があちらこちらで催されました。現代にも引き継がれている光景です。
さて、話題は「菊」から、「月」へ。9月8日の皆既月食はご覧になられましたか?皆既月食とは、太陽と地球と月が一直線に並び、満月が地球の影に完全に覆われてしまう現象のことです。今回、日本で見られたのは、およそ3年ぶり。その日の長崎の夜空は曇りがちで、わずかな雲の切れ間に期待して待っていましたが、睡魔には勝てませんでした。画像は月が欠けはじめる前の満月と、欠けはじめて30分ほど経ったとき(午前2時頃)の部分月食です。次に日本で見られる皆既月食は、意外にもすぐで、来年3月3日。壮大な天体ショーは、いい気分転換になります。どうぞ、お楽しみに。
おまけ画像です。虫食いの跡が笑顔に見えるサクラの枯葉を、散歩中に偶然、見つけました。小さなハッピーのおすそ分け。
◎参考にした本 「ビジュアル・ワイド 江戸時代館」(小学館)