第678号【アジサイとシーボルトの木】
長崎県を含む九州北部地方は、6月4日に梅雨入り。昨年の梅雨入りは、かなり早い5月中旬でしたが、今年は平年並みでした。街角では目にも涼しい青紫のアジサイが、道行く人々の目を楽しませています。この時期、開花している花々はアガパンサス、タイサンボク、クチナシ、ザクロなどなど。どの花も美しく、雨の日の気分を和ませてくれます。
梅雨の晴れ間に中島川沿いを歩けば、甲羅干しをしているカメや羽根を広げて虫干しをしているアオサギの姿が。みな貴重な晴れ間をムダにしません。眼鏡橋界隈では、いろいろな種類のアジサイが設置され、多くの人がスマホでの撮影に夢中になっていました。


アジサイの季節になると、足を運びたくなるのが、長崎市鳴滝にある「シーボルト記念館」です。シーボルト(1796-1866)は、江戸時代後期に出島のオランダ商館付の医師として来日。西洋医学や博物学を伝え、日本の近代化に大きく貢献したことで知られています。アジサイはそんなシーボルトのゆかりの花。シーボルトが帰国後に著した『日本植物誌』のなかには、「Hydrangea otaksa」という学名を付けたアジサイが載っています。これは、妻のお滝さんの愛称「オタクサ」によるもの。美しいアジサイに、遠い異国の人となった最愛の妻のイメージを重ねたのでしょう。

シーボルト記念館の広い庭園の中央に設けられたシーボルトの胸像は、アジサイに囲まれていますが、年を重ねた株のようで、花は以前より小ぶりになっている印象です。アジサイは、落葉低木の多年草で、冬場は枯れて葉を落としますが、適切な剪定と水やりで何十年も花を楽しめます。シーボルト記念館の古株のアジサイも、味わいのある風情を漂わせていました。

ところで、シーボルト記念館の庭園の入り口付近には、「シーボルトの木」が植えられています。この木は、シーボルトが帰国後に、鳴滝塾跡の周辺に生えていた木を移植したもので、当時、牧野富太郎博士(1862-1957)によって新種と判断され、「シーボルトの木」と名付けられました。それから約60年後の1966年、中国原産の「クロウメモドキ」であることが判明。シーボルトが薬木として中国から取り寄せ、鳴滝やその周辺に植えられていたと思われるそうです。低い木なので、つい見過ごしてしまいそうですが、シーボルトと牧野博士をつなぐエピソードを持つ貴重な木です。

さて、季節がめぐるなか、雨にも風にも負けず、着々と工事が進められているのが長崎駅前界隈です。先月15日に、かねてから工事中だった駅前広場(長崎駅東口)の歩道橋が完成し通行できるようになりました。今後、歩道橋下の広場の整備が行われます。この「長崎駅東口多目的広場」の完成は、来年の夏だそう。本当に楽しみです。

