第682号【人と時をつなぐ伝統の祭り】
10月中旬。九州は、日中の気温が30℃を超える日があるものの、めっきり過ごしやすくなりました。夕刻になると大型クルーズ客船が停泊する長崎港の空気もひんやり。イソヒヨドリもひと息ついているようでした。列島を見渡せば、大きな爪痕を残した令和8年熊本地震や大雨や長雨による災害に見舞われた各地の復旧作業はまだ続いています。台風の発生が例年より多い今年。9月を過ぎたいまも日本のはるか南では、台風のたまご(熱帯低気圧)が生まれています。人智を超える自然の猛威。万全の準備を整えておきたいものです。
さて、秋はお祭りの季節です。先月、長崎市民体育館では、「第49回長崎郷土芸能大会」が開催されました。5つくらいの地域の芸能をまとめて観ることができるので、毎年楽しみにしている方も多いよう。今年は、「安珍清姫(あんちんきよひめ)」(式見地区)、「矢上平野浮立」(東長崎地区)、「長崎半島樺島ハイヤ節」(野母崎地区)、「中尾獅子浮立と唐子踊」(東長崎地区)そして、雲仙市からの特別参加で、「瑞宝太鼓」が参加。例年、市中心部で行われるパレードは、雨のため中止でしたが、午後から演舞が行われる体育館には多くの市民が集まっていました。
地域の保存会等によって守られ伝承されている郷土芸能。「郷くんち」と総称されるその多くは、かつて農作業の節目や雨乞いの神事等として行われてきました。歌舞伎の演目が寸劇となり紀州の国から伝承されたという「安珍清姫」、肥前浮立らしい特徴が見られるという「矢上平野浮立」、漁師町独特の活気が表現された「長崎半島樺島ハイヤ節」など、いずれも江戸時代から受け継がれて来たものだそう。個性的な演目に、地域性が垣間見えるようです。
10月初旬は、諏訪神社の秋の大祭「長崎くんち」で賑わいました。令和8年の踊町は今籠町(傘鉾・本踊)、油屋町(傘鉾・川船)、元船町(傘鉾・唐船祭)、上町(傘鉾・上町コッコデショ)、鍛冶屋町(傘鉾・宝船・七福神)、筑後町(傘鉾・龍踊)。3日は夕刻から「庭見せ」。踊町の各戸で、家紋を染め抜いた幕を張り、本番で使用する衣装、小道具、楽器などを披露しました。そして7、8、9日はいよいよ本番。踊町による奉納踊が勇壮に、華やかに繰り広げられました。
豊かな恵みをくれる自然に感謝し、人の幸せを祈る伝統の祭りや芸能。先人が残してくれたものを絶やしたくない、未来へつなぎたい、そんな思いで脈々と受け継がれてきました。それは、時と人をつなぐ「たすき」のようなもの。演者も観客も一緒になって、この「たすき」を次の世代へ受け渡していきたいものです。